政府が掲げる「異次元の少子化対策」で児童手当や給付金など、子育て世帯への支援はどのように変わるのか説明します。
- ※2024年8月9日時点の情報掲載
こども未来戦略方針
加速化プランの主な支援策
支援策の実施時期(予定)
経済的支援
児童手当
支給対象
18歳(高校生)※まで拡大
現在、中学卒業まで支給されている児童手当を高校卒業まで延長します。
なお、所得制限は撤廃され、支給対象は全員に拡大されます。
※18歳に達する日以降の最初の3月31日まで
第3子加算、第1子が22歳の年度末まで支給
現行制度では、子どもとして数える期間が高校生までのため、第1子が高校を卒業すると第3子の加算が受けられなくなりますが、子どもとして数える期間を「22歳の年度末」まで延長します。
支給額(月額)
- 3歳未満:1万5000円
- 3歳~18歳:1万円
- 第3子以降(0歳〜18歳の全年齢):3万円
支給回数
隔月(偶数月)の年6回支給されます。
※現在は年3回(4カ月に1回)の支給
いつから?
2024年10月から制度が変更されるため、2024年12月の支給分から拡充されます。
※高校生(16歳~18歳)への児童手当拡充に伴い「扶養控除」は、所得に関係なく一律で控除額を縮小し、所得税の控除額は現行の38万円から25万円に、住民税は33万円から12万円に引き下げる方針です。
児童手当の詳細については、児童手当の説明をご確認ください。
児童扶養手当
ひとり親世帯などに支給する児童扶養手当を拡充する方針です。第3子以降の支給額を、第2子と同じ「月額最大10,420円」に引き上げ、支給の要件となる所得制限も緩和する予定です。
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対象者
いわゆる「ひとり親世帯」などの低所得世帯で、18歳以下の子どもがいる方
※所得制限を緩和する方針 -
支給額(最大)
1人目:44,140円
2人目:10,420円
3人目:6,250円から10,420円に引き上げを検討 -
いつから?
2025年1月支給分から実施予定
現在の児童扶養手当については、児童扶養手当の説明をご確認ください。
出産費用
保険適用
出産費用の公的保険制度の適用が検討されています。通常、医療費の1~3割は患者の自己負担ですが、出産費用は「自己負担なし」とした上で「給付」を行うことも検討されています。
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対象者
正常分娩で出産される方 -
いつから?
2026年度を目途に検討中
全国の病院などの出産費用やサービス内容を一覧化した専用サイトが厚生労働省のホームページに開設されました。出産費用や個室の有無、立ち合い出産・無痛分娩ができるか、分娩件数などを、全国約2,000カ所の医療機関ごとにまとめ、妊産婦が医療機関を選ぶ際に比較できます。
その他の助成・給付金
妊娠・出産期から2歳までの支援を強化する方針です。
2023年4月から以下を開始しています。
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出産・子育て応援給付金:10万円※
(2023年4月以降に出産された方) - 出産育児一時金:50万円へ増額
- 低所得妊婦の初回産科受診料助成:1万円
※出産・子育て応援給付金は、今後「妊婦のための支援給付(仮称)」として2025年度に制度化する方針です。
妊娠・出産期に受けられる現行制度については、出産育児一時金や妊婦健診の助成制度の説明をご確認ください。
大学などの高等教育費、奨学金
大学などの高等教育にかかる教育費の負担軽減策として、授業料の無償化や奨学金の所得制限緩和などが検討されています。
大学などの授業料無償化
3人以上の子どもがいる多子世帯への支援策として、子どもの大学授業料などを無償化する方針です。
3人子どもがいる場合で、第1子と第2子が大学に在籍している場合は2人とも対象です。ただし、第1子が卒業後に扶養から外れると、扶養する子どもが2人となり対象外になります。
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対象者
3人以上の子どもがいる多子世帯(所得制限は設けない方針) -
いつから?
2025年度から実施予定 -
授業料無償化の対象
大学や短期大学、高等専門学校などの授業料や入学金など -
上限額(予定)
大学の授業料免除の上限は、国公立が約54万円、私立は約70万円
大学の入学金の上限は、国公立が約28万円、私立が約26万円
ただし、直近3年度全ての収容定員が8割未満の場合には対象外となる可能性があります。文部科学省は、ホームページで対象校のリストを公表する予定です。
授業料後払い制度
在学中は授業料を支払わず、卒業後に所得に応じて返済する制度です。
所得に応じた返済が始まる年収基準は300万円程度で、子どもが2人いる場合は年収400万円程度とする予定です。
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対象者
修士課程の大学院生を対象に先行導入 -
いつから?
2024年度から導入予定
授業料等減免、給付型奨学金
授業料等の減免および給付型奨学金について、世帯年収上限と対象者の拡充を検討しています。
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対象者
多子世帯や理工農系の学生(世帯年収約600万円) -
いつから?
2024年度から拡大予定
貸与型奨学金
減額返金制度の利用可能な年収上限を引き上げ予定です。
現在は325万円ですが、400万円に引き上げ、子ども2人世帯は500万円以下まで、子ども3人以上世帯は600万円以下まで引き上げます。
また、所得連動方式を利用している場合は、所得計算において、子ども1人につき33万円の所得控除を上乗せする予定です。
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いつから?
具体的な実施時期は未定
医療費
子ども医療費助成制度
現在、不要な受診や医療費を抑制するため、小学生以上の児童の医療費助成をしている自治体に対し補助金を減額していますが、この措置を撤廃し、自治体による子どもの医療費助成を後押しする方針です。
具体的な実施時期は未定です。
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未就学児(小学校入学前)
公的保険と自治体補助により自己負担なし -
小学生以上
市区町村が独自に補助しており負担割合が異なる
住宅
住宅ローン控除(住宅ローン減税)
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して、マイホームを購入・増改築した場合、一定の条件を満たすと税金の控除が受けられる制度です。2025年末の入居まで適用され、2024年の入居からローン残高の上限額が引き下げられますが、どちらかが39歳以下の夫婦や子育て世帯に限って2023年の上限額を1年間維持する方針です。
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対象者
どちらかが39歳以下の夫婦、子育て世帯 -
対象となる住宅
新築等の認定住宅など環境性能の高い住宅 -
借入限度額
2023年の上限額を1年間維持することを検討(新築の長期優良住宅で5,000万円、ZEH水準省エネ住宅で4,500万円、省エネ基準適合住宅で4,000万円) -
いつの入居?
2024年入居分(1年限りの実施予定。延長の可否は今後検討)
フラット35の金利優遇
長期固定金利の住宅ローン(フラット35)について、子育て世帯などに配慮し、子どもの数に応じて金利を引き下げる方針です。
子育てしやすい住宅として、広さや安全面など良質な住宅取得を促します。
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対象者
18歳未満の子どもがいる世帯や、子どもがいなくても夫婦どちらかが39歳以下の若年層世帯などで検討中 -
いつから?
2023年度中に開始予定
公営住宅の優先入居
公営住宅等の公的賃貸住宅を対象に、子育て世帯等が優先的に入居できる仕組みの導入を検討しています。
また、空き家なども子育て世帯向けに活用を促す方針です。
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いつから?
具体的な時期は未定
現行制度については、公営住宅の申し込みの説明をご確認ください。
その他
生命保険料控除
子育て世帯への支援策として、扶養する子どもがいる場合、生命保険料控除の控除額の上限引き上げを検討しています。
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対象者
扶養する子どもがいる方 -
控除額の上限
所得税16万円まで引き上げを検討 -
いつから?
具体的な時期は未定
子育てサービス
保育
こども誰でも通園制度
就労にかかわらず、時間単位で柔軟に利用できる通園制度です。月一定時間の利用可能枠の中で利用できます。
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対象者
生後6カ月~2歳の未就園児 -
いつから?
2023年度から実施予定
2026年度に全国展開 -
利用枠
月10時間で検討されていましたが利用枠を拡大する方針
幼児教育・保育の無償化
2019年10月から幼児教育・保育の無償化が開始しました。3歳~5歳の場合、幼稚園・保育所・認定こども園などの利用料が無償です。
認可外保育施設の利用料無償化
認可外保育施設の場合は、2024年9月末までは保育の必要性の認定を受けると、3歳~5歳で月額3.7万円まで、0歳~2歳で住民税非課税世帯の場合、月額4.2万円まで利用料が無償です。
2024年10月以降は、以下の通り、要件を満たす施設のみが無償化の対象です。
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利用料無償化の対象
認可外保育施設の届出がされていて、外国人児童が多い施設や夜間保育所など -
いつから?
2024年10月から2030年3月末まで
(当初2024年9月末の予定でしたが対象施設のみ5年半延長する方針)
保育士の配置基準改善
幼児教育・保育の質向上のため、保育士の配置基準を見直す方針です。また、保育士等の処遇改善もあわせて検討するとしています。
1歳児 | 「6対1」から「5対1」へ改善 |
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4・5歳児 | 「30対1」から「25対1」へ改善 |
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いつから?
4・5歳児の配置基準の見直しは、2024年度から実施予定
現行制度の詳細は、保育園・幼稚園などの制度をご確認ください。
学童保育
「小1の壁」となっている学童保育(放課後児童クラブ)の待機児童解消などに向けて、環境の整備が進められています。
- 受け入れを152万人に拡大(早期に達成できるよう取り組む)
- 常勤職員の配置改善(2024年度から開始予定)
産後ケア
現在の産後ケアは、育児への不安や心身に不調がある方を対象としてきましたが、「産後ケアを必要とする者」に改定し、希望者全員が補助を受けられるように変更する予定です。
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対象者
産後、子どもが1歳になるまで誰でも -
料金補助
1回あたり2,500円を5回まで -
いつから?
具体的な時期は未定
住民税非課税世帯については、既に1回あたり5,000円で回数制限なしの補助が受けられます。この制度は継続する方針です。
また、今後、産後ケア事業の拡充に向けて、各市区町村への補助額の上限を撤廃する予定です。2024年度中に全ての市区町村での事業実施を目指しています。
共働き支援
育児休業給付金、時短勤務
育児休業給付金
給付率引き上げ(手取り10割)
14日以上の育休取得を条件に、最大28日間の給付率を、現行の67%(手取りで8割相当)から8割程度(手取り10割相当)に引き上げる方針です。
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対象者
育休を取得している男女ともに -
いつから?
2025年度から実施予定
現行制度の詳細は、育児休業給付金(育休手当)の説明をご確認ください。
時短勤務の給付金制度
育休明けに時短勤務をする場合、労働時間や日数などに制限なく、賃金の10%を給付する方針です。雇用保険に「育児時短就業給付(仮称)」を設け、時短勤務で収入が下がる子育て世帯を経済的に支援します。
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対象者
子どもが2歳未満 -
いつから?
2025年度から実施予定
育児期の働き方支援
育児期に柔軟な働き方ができるよう支援の拡充が検討されています。また、制度を導入した中小企業に対して助成を強化する方針です。
育児期の働き方
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親と子の選べる働き方制度
子どもが3歳以降小学校就業前まで、時短勤務、テレワーク、フレックスなど柔軟な働き方が選択できる制度。中小企業への制度導入支援として、3種類以上の働き方を用意した場合は1人あたり25万円、2種類の場合は20万円を補助する予定。
(2024年度から開始予定) -
テレワークの努力義務
子どもが3歳になるまで、短時間勤務措置の義務付けに加えてテレワークの努力義務が追加
(2024年度中に法改正予定) -
育休取得者や時短勤務者の周囲社員への応援手当
育休取得者や時短勤務者の業務を代替する周辺社員に手当を支給した中小企業に対し、助成を強化予定。助成期間は1年間で、育休者1人につき最大125万円、時短勤務者の場合は子どもが3歳になるまで最大110万円を助成。代替期間の長さに応じて支給額を増額する方針。
(2024年度から開始予定)
育児期の休暇・残業
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子の看護休暇
年5日の看護休暇の対象年齢を小学校3年生修了時まで引き上げ、行事参加や学級閉鎖時などでも活用できるよう事由範囲を拡充予定。
(2025年4月に実施予定) -
選択的週休3日制度
仕事と育児の両立にあたり心身の健康を守る目的で、制度普及に取り組む。 -
残業免除
残業免除が申請できる期間を小学校入学前まで延長。
(2025年4月に実施予定) -
育児期の時間外労働上限規制
育児期の男女が職場から帰宅後に育児や家事を行うことができるよう、長時間労働の是正に取り組む方針。
(2024年度に全面施行予定)
産後パパ育休、男性育休
産後パパ育休は、14日以上の育休取得を条件に最大28日間、給付率を手取り10割相当に引き上げる方針です。
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いつから?
2025年度から実施予定
現行制度の詳細は、育児休業給付金(育休手当)の産後パパ育休の説明をご確認ください。
その他にも、以下が検討されています。
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男性の育休取得率を引き上げ
2025年:公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%
2030年:公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85% - くるみん認定企業など育休取得状況に応じたインセンティブ強化
パート、自営業
週所要労働時間20時間未満
パート・アルバイト
育児と仕事の両立に向け、パート・アルバイトの方向けの支援策も検討されています。
106万円の壁(年収の壁)対策
手取り収入を減らさない取り組みをした企業に対し支援を行います。
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対象
従業員が101人以上で、従業員の手取り額の減少対策に取り組んだ企業 -
助成額
従業員1人あたり最大50万円 -
いつから?
2023年10月20日から申請開始(2025年度の年金制度改正まで)
130万円の壁(年収の壁)対策
収入が一時的にあがったことを事業主が証明することで、連続2回まで一時的に130万円を超えても扶養にとどまれるようにします。
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対象者
従業員100人以下の企業で働くパート・アルバイト -
いつから?
2023年10月20日以降の被扶養者認定・収入確認時に適用
年収の壁対策に関する関連サイト
雇用保険の適用
加入要件である週の労働時間を、現行の「週20時間以上」から「週10時間以上」に緩和する方針です。適用拡大により、パートや時短勤務の方の加入が見込まれ、失業給付や育児休業給付等が受給可能になります。保険料率や給付は、現在の加入者と同じ水準とする予定です。
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対象者
週所定労働時間10時間以上20時間未満の方 -
いつから?
2028年10月から開始予定
現行制度の詳細は、雇用保険の基本手当(失業手当)の説明をご確認ください。
企業に対する支援強化パッケージ
労働時間の延長や賃金引上げに取り組む企業に対する費用補助を実施予定です。
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いつから?
2023年中に内容決定予定
自営業・フリーランス
育児期間の国民年金保険料の免除措置を延長する方針です。
現行制度では、対象は女性だけで、期間は出産予定日の前月から4カ月間ですが、対象に男性も加え、子どもが1歳になるまで延長します。
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対象者
育児期の国民年金の第1号被保険者(男女ともに)
※所得制限なし、休業の要件も設けない -
免除期間
子どもが1歳になるまで -
いつから?
2026年度に実施予定
参考(外部サイト)