年収の壁
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対象となる人
パートやアルバイトで働く人、その扶養者
内容
目次
1. 年収の壁とは
2. 所得税に関わる壁(103万円、150万円、201万円)
3. 社会保険に関わる壁(106万円、130万円)
4. 103万円、106万円の壁の見直しについて
1. 年収の壁とは
「年収の壁」とは、それを超えると、税金や社会保険料の負担が生じる一定の年収額の境目のことです。
主に話題となるものには「所得税に関わる壁」と「社会保険に関わる壁」の2種類があります。
103万円・106万円・130万円とさまざまな「年収の壁」があり、その付近の収入で働くパートやアルバイトの人は、手取りが減少したり、扶養者(配偶者・親)の税負担が増えたりしないように、働く時間を調整して年収を抑えている場合もあります。
現在、「103万円の壁」の引き上げや「106万円の壁」の撤廃が議論されています。※2024年12月時点
2. 所得税に関わる壁
働く本人 | 扶養者(配偶者、親) | |
---|---|---|
103万円の壁 | 所得税が発生 | 「配偶者特別控除」が適用される 「扶養控除」の適用がなくなる |
150万円の壁 | 所得税かかる | 「配偶者特別控除」の控除額が段階的に減額される |
201万円の壁 | 所得税かかる | 「配偶者特別控除」の適用がなくなる |
103万円の壁
103万円は、会社などから給料をもらって働く給与所得者に所得税が発生する境目となる年収です。所得税は、1年間の給与収入から給与所得控除と基礎控除を差し引いたあとの「課税所得」に対して所得税を計算します。
- 給与所得控除:55万円 ※年収 162.5万円以下の場合
- 基礎控除:48万円
この2つの控除額の合計が103万円になるため、1年間の給与収入が103万円までであれば所得税は発生しません。103万円を超えると、超えた分の「課税所得」に対して所得税が発生します。
所得税について詳しくは、所得税のページをご確認ください。
パートなどで働く人がいる世帯への影響
夫や妻の扶養に入っている人がパートなどで働く場合、1年間の給与収入が103万円以下までは、扶養者(納税者)に配偶者控除が適用されます。103万円を超えると配偶者特別控除に切り替わります。
控除額(満額38万円)は、控除を受ける扶養者(納税者)本人の合計所得金額などにより異なります。詳しくは、国税庁「No.1191 配偶者控除」または国税庁「No.1195 配偶者特別控除」をご確認ください。
【所得税の発生例】配偶者の年収が103万円を超える
年収が夫500万円、妻105万円で、夫が扶養者の場合
所得税 | |
---|---|
夫 | 172,500円 |
妻 | 1,000円 |
夫の計算式:(500万-48万-144万-38万)×税率10%-9.75万 ※給与所得控除144万円、配偶者特別控除38万円、累進課税の控除9.75万 妻の計算式:(105万-103万)×税率5%
収入は給与収入のみ、医療費控除など他の控除は考慮していません。
累進課税については、所得税のページの「3. 所得税額の計算と税率」をご確認ください。
アルバイトで働く学生などがいる世帯への影響
アルバイトで働く学生などの場合、1年間の給与年収103万円以下までは、扶養者(親)に扶養控除が適用されます。
103万円を超えると本人に所得税が発生し、税制上の扶養からも外れ扶養控除が適用されなくなるため親の税負担が増えます。
詳しくは、国税庁「No.1180 扶養控除」をご確認ください。
【所得税の発生例】子供の年収が103万円以内
年収が夫500万円、妻105万円、子供(19歳)103万円で、夫が扶養者の場合
所得税 | |
---|---|
夫 | 109,500円 |
妻 | 1,000円 |
子供 | 0円 |
夫の計算式:(500万-48万-144万-38万-63万)×税率10%-9.75万 ※給与所得控除144万円、配偶者特別控除38万、扶養控除63万円、累進課税の控除9.75万 妻の計算式:(105万-103万)×税率5%
収入は給与収入のみ、医療費控除など他の控除は考慮していません。
【所得税の発生例】子供の年収が103万円を超える
年収が夫500万円、妻105万円、子供(19歳)105万円で、夫が扶養者の場合
所得税 | |
---|---|
夫 | 172,500円 |
妻 | 1,000円 |
子供 | 1,000円 |
夫の計算式:(500万-48万-144万-38万)×税率10%-9.75万 ※給与所得控除144万円、配偶者特別控除38万、累進課税の控除9.75万 妻の計算式:(105万-103万)×税率5% 子供の計算式:(105万-103万)×税率5%
収入は給与収入のみ、医療費控除など他の控除は考慮していません。
150万円・201万円の壁
夫や妻の扶養に入っていてパートなどで働く人の扶養者(納税者)が受けられる配偶者特別控除の控除額(満額38万円)は、配偶者の合計所得金額などに応じて異なります。
パートなどで働く人の1年間の給与収入が150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額は段階的に減額されます。201万円を超えると、配偶者特別控除を受けられなくなります。詳しくは、国税庁「No.1195 配偶者特別控除」ご確認ください。
【所得税の発生例】配偶者の年収が150万円を超える
年収が夫500万円、妻160万円、子供(19歳)100万円で、夫が扶養者の場合
所得税 | |
---|---|
夫 | 116,500円 |
妻 | 28,500円 |
子供 | 0円 |
夫の計算式:(500万-48万-144万-31万-63万)×税率10%-9.75万 ※給与所得控除144万円、配偶者特別控除31万、扶養控除63万、累進課税の控除9.75万 妻の計算式:(160万-103万)×税率5%
収入は給与収入のみ、医療費控除など他の控除は考慮していません。
【所得税の発生例】配偶者の年収が201万円を超える
年収が夫500万円、妻220万円、子供(19歳)100万円で、夫が扶養者の場合
所得税 | |
---|---|
夫 | 147,500円 |
妻 | 49,000円 |
子供 | 0円 |
夫の計算式:(500万-48万-144万-63万)×税率10%-9.75万 ※給与所得控除144万円、扶養控除63万、累進課税の控除9.75万 妻の計算式:(220万-48万-74万)×税率5%
収入は給与収入のみ、医療費控除など他の控除は考慮していません。
3. 社会保険に関わる壁
勤め先 | 要件 | 加入する保険制度 | |
---|---|---|---|
106万円の壁 | 従業員51人以上 | 労働時間 週20時間以上など | 厚生年金保険 健康保険 |
130万円の壁 | 上記以外 | ‐ | 国民年金保険 国民健康保険 |
※2024年10月から「従業員数101人→51人以上」と社会保険の適用が拡大されました。
106万円の壁
106万円は、健康保険や厚生年金保険の加入義務が発生する境目となる年収です。
パートなどで働く人への影響
従業員51人以上の会社でパートなどで働く場合、1年間の給与収入が106万円を超えると(月額:8.8万円以上)、配偶者の社会保険の扶養から外れ、勤め先の厚生年金や健康保険に加入します。保険料(事業主と折半)が発生するため手取り収入が減ります。
厚生年金や健康保険の詳細や手取り収入の試算については、厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」をご確認ください。
アルバイトで働く人への影響
親の扶養内でアルバイトで働く人(学生など)は、親が加入する社会保険(厚生年金・健康保険)に加入したままとなるため106万円の壁の影響はありません。
130万円の壁
130万円は、国民年金や国民健康保険の加入義務が発生する境目となる年収です。
従業員50人以下の会社などでパートやアルバイトで働く場合、1年間の給与年収が130万円を超えると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れ、国民年金や国民健康保険に加入します。保険料は自己負担となります。
「106万円・130万円の壁」の支援対策
政府は「106万円の壁」や「130万円の壁」を超えても手取りを減らさない取り組みを行った企業を支援しています。
詳しくは、児童手当や給付金 最新情報まとめページをご確認ください。
4. 103万円、106万円の壁の見直しについて
「103万円の壁」の引き上げや「106万円の壁」の撤廃が議論されています。(2024年12月時点)
103万円の壁の引き上げ
所得税額を計算するときの控除額(非課税枠)103万円の引き上げについて議論中です。178万円を目指して、2025年から引き上げる方向で検討されています。
103万円が引き上げられた場合、所得税が発生するのを気にして働く時間を抑えていたパートやアルバイトの人は、働く時間を増やすことができます。非課税枠が引き上げられると、年収の壁を気にせずに働いている給与所得者も減税となり年収が増えます。
103万円を超えると親の扶養から外れる現在の扶養控除の要件も見直す方向で検討されています。
106万円の壁の撤廃
厚生労働省は、会社員などの扶養にはいって働く人を対象とした社会保険の加入要件(年収要件と企業規模の要件)を2026年10月に撤廃する方向で調整しています。
撤廃されると、週の労働時間20時間以上であれば、年収を問わず勤め先の健康保険や厚生年金保険に加入することになります。
社会保険への加入は、傷病手当金や出産手当金を受けられたり、将来もらえる年金が増えるメリットがある反面、保険料の自己負担によって手取り収入は減少するため、年収156万円未満を対象に会社側の保険料の負担割合を特例的に増やせる仕組みが検討されています。