オンライン申請は
自治体が提供するべき
行政サービスの新たな選択肢

オンライン申請は 自治体が提供するべき 行政サービスの新たな選択肢

兵庫県 養父市

ひょうごけん やぶし

全国トップクラスのマイナンバーカード交付率を誇る兵庫県養父市は、オンライン申請を積極的に推進し、マイナポータル(ぴったりサービス)などで36の行政手続をオンライン化している。同市経営企画部デジタルファースト課長の安達洋道氏に、オンライン申請に積極的に取り組む背景や狙い、オンライン化のコツなどについて聞いた。

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マイナンバーカードは使われるからこそ意味がある

交付率全国トップクラスの自治体がオンライン申請を推進する理由

兵庫県北部に位置する兵庫県養父市は人口約2万2100人。南北に一級河川・円山川が流れ、市西部には兵庫県の最高峰・氷ノ山を擁する自然豊かな土地柄だ。西日本有数のアウトドアエリアでもあり、夏にはハイキング、冬にはスキーやスノーボードに多くの人がにぎわう。

一方で、近年では、デジタル化に積極的な自治体として、大手メディアなどに取り上げられている。マイナンバーカードの交付率は77.8%(2022年6月末現在)と全国トップクラス。内閣府が主導するデジタル田園都市国家構想推進交付金では、地域コミュニティの共助を後押しし、市民の健康増進や安否確認を図る「デジタルヘルシーエイジング事業」が採択された。児童手当、介護保険、不在者投票などの行政手続並びにアンケート及び講座申込等、約100の手続をオンライン化しており、今後も対応手続を追加していく方針だ。経営企画部デジタルファースト課長の安達洋道氏は「市民の皆さまにマイナンバーカードの利便性を感じていただくためには、マイナンバーカードの利用シーンを増やしていく必要がありました」と、オンライン申請に積極的な理由を語る。

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オンライン申請はマイナンバーカードの利用促進を後押しする

  1. 01.マイナンバーカードの利用を促進できる

    養父市のようなマイナンバーカードの交付率が高い自治体が、次に取り組むべき施策は「マイナンバーカードの利用促進」だ。マイナンバーカードを取得したとしても、身分証明書としてしか利用できなければ、従来の運転免許証や健康保険証などとそれほど変わりはなく、住民は利便性を感じることができない。そこで、養父市は行政手続のオンライン化を積極的に推進。安達氏が所属するデジタルファースト課が中心となってオンライン申請の手続数を増やすことで、マイナンバーカードの利便性を住民に訴求し、利用を促進した。

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  2. 02.行政サービスの新たな選択肢を設けることができた

    安達氏は「仮にオンライン申請があまり利用されなかったとしても、『市民の皆さまに行政サービスの選択肢を増やす』というのは、自治体の責務です」と指摘する。オンライン申請を導入したとしても、必ずしもオンライン申請が頻繁に利用されるとは限らない。また、手続をオンライン化したとしても、紙の書類による対面手続は継続する。その場合、所管課の事務負担が増加することも考えられるが、安達氏は、「それでも、市民により多くの選択肢を提供し、行政サービスの向上を目指すのは、自治体の重要な役割です」と語る。

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  3. 03.住民の幅広いニーズに対応できる

    養父市では、児童手当や介護保険の手続のほか、不在者投票用の投票用紙等の請求にもオンライン申請が利用されている。直近の2022年7月に行われた第26回参議院議員通常選挙でも広く利用され、安達氏は、市民の多様なニーズに応えられたと話す。「以前は、長期の出張などで市外に出られている方は、郵便で投票用紙等を請求するしかありませんでしたが、それだと書類の往復に時間がかかってしまいます。もっと便利な方法を求められていましたが、このオンライン申請を活用することで以前より短時間の対応が可能になります。新たな手段をご提供できたのは大きな成果です」(安達氏)。

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標準様式の活用がオンライン申請の推進をサポート

ぴったりサービスの標準様式を利用するメリットとは

養父市が提供している36のオンライン申請手続のうち、25はマイナポータル(ぴったりサービス)の標準様式で登録されている。「標準様式は所定のテンプレートを設定するだけで手続を登録できるため、作業が非常にスムーズです。また、標準様式の活用は国の方針でもあるので、当初からオンライン申請はできる限り標準様式で登録するつもりでした」と安達氏。実際に、養父市では2021年12月のオンライン申請のスタート時に、25の手続すべてを公開している。標準様式の登録はデジタルファースト課の担当者1名で行ったが、事前知識がなくても難なく設定を終えることができた。

さらに、安達氏は「標準様式であれば、当該制度に精通していなくても、オンライン申請を登録できるのがいいですね」とも指摘する。自治体の独自様式でオンライン申請を登録する際には、申請に関する制度や例規を理解したうえで、様式の項目を設けなければならないため、所管課以外の部署では対応が難しい場合が多い。その点、標準様式は、所定のテンプレートを設定すればよいため、所管課以外の部署でも簡単に手続を登録できる。オンライン申請を効率的に推進していくうえでも、標準様式は効果的なのだという。

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一つの部署ではオンライン申請は推進できない

多数のオンライン化を実現した養父市の「オンライン化のコツ」とは

オンライン申請に取り組むうえで注意した点について、安達氏は「所管課とのコミュニケーションが重要でした」と振り返る。養父市ではオンライン申請の登録はデジタルファースト課が担い、オンライン申請の受付・対応は所管課が担当している。そのため、部署間の細やかな連絡や調整が欠かせなかった。「受け付けや処理業務の負担を負うのは所管課ですから、情報系の部署の独断ではオンライン化を進めることはできません。オンライン申請を登録する際は、両者の役割分担を事前に明確にすることを心がけました。また、異なる部署とはいえ、『市民サービスの選択肢を増やす』という同じ目標のもと、取り組みを進めている意識は共有しておくべきだと思います」(安達氏)。

さらに、住民にオンライン申請の普及を図るうえでは、地道な広報活動も欠かせない。養父市では、市のWebサイトや広報誌での広報に加え、高齢者向けのスマートフォン教室でオンライン申請の申請方法をレクチャーするなど、オンラインとオフラインの組み合わせで普及を推進した。

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効率化にとどまらず、住民の豊かで健やかな暮らしを支えたい

最後に、養父市における行政DXの意義について聞くと、安達氏は「コミュニティの維持にはデジタルの力が必要です」と答えた。「養父市は高齢化が進んでいることもあって、自治協議会の活動など、コミュニティを維持するための人手は慢性的に不足しています。そのため、地域で中心となる50代から60代にいろいろな負担が集中しているのが現状です。その負担を減らし、持続的にコミュニティを運営していくためにも、オンライン申請などの行政DXは不可欠です。特に、マイナポータルのぴったりサービスのオンライン申請は、Yahoo!くらしからも申請手続ができるなど、誰にでも利用しやすいですし、コミュニティの事務負担軽減に貢献してくれるのではないかと見込んでいます」(安達氏)。

オンライン申請は、行政の効率化や行政サービスの向上にとどまらず、地域の豊かで健やかな暮らしを支えるツールとしても期待を寄せられている。

ライター:島袋 龍太

フォトグラファー:三浦 伸一

取材日:2022年7月15日

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