オンライン申請の導入が
行政デジタル化の後押しに
職員が感じた意外な効果

オンライン申請の導入が 行政デジタル化の後押しに 職員が感じた意外な効果

鹿児島県 志布志市

かごしまけん しぶしし

国により行政のデジタル化が推進されるなか、オンライン申請の導入は、全国の自治体における喫緊の課題になった。今、自治体には、いかにしてオンライン申請を効率的に導入し運用していくかが問われている。鹿児島県志布志市では、令和3年度に新設された「デジタル化推進係」が、その役割を担っている。同市の先進的なオンライン申請を牽引する情報管理課デジタル化推進係の加治木梢氏と轟原彩未氏に話を聞いた。

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39のオンライン申請を導入した志布志市

デジタル化施策を推進するポイントとは?

九州地方の南端、宮崎県との県境に位置する志布志市は人口約3万人。市の南側には志布志湾が広がり、国が中核国際湾港に指定する志布志港を擁する。北部から東部にかけては丘陵山間地帯であり、豊かな自然と四季折々の海の幸・山の幸に恵まれた土地柄だ。一方で、デジタル化施策にも積極的。平成20年に策定した志布志市情報化基本計画では、市内全域への光ファイバーケーブル回線敷設などを通じて、情報通信基盤の整備を推進した。さらに、令和3年策定の「志布志市デジタル化推進計画」では、行政DXの実現に向けた推進体制を構築。DX推進の専門部会を複数設置し、行政手続きのオンライン化を始めとした各種施策を推進している。

「デジタル化施策には、長期的なビジョンを持ってのぞむのがポイントです」。そう話すのは情報管理課デジタル化推進係係長の加治木梢氏だ。デジタル化推進係は、専門部会や各部門間を調整し、行政DXの推進役を担う部署。その係長として、加治木氏は数々のデジタル化施策を提案し、実現に導いた。現在、39を数えるオンライン申請の導入についても主導的な役割を果たしている。

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オンライン申請は「自治体・住民・職員」のそれぞれにメリットをもたらす

  1. 01.人口減少社会に欠かせない、業務効率化を推進できる

    「今後、志布志市に限らず、あらゆる自治体において、人口減少による労働力不足が課題となるはずです。それを見据えて、自治体はデジタル化による業務効率化に取り組んでおかなければいけません」(加治木氏)。オンライン申請は、対面・書面による手続きを削減し、自治体の業務効率化を促進する。また、加治木氏は、マイナポータル(ぴったりサービス)経由のオンライン申請を活用することで、国の方針に沿って業務を標準化でき、より効率化を推進できると話す。

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  2. 02.住民のニーズを反映した、より良い市民サービスを実現できる

    オンライン申請の導入は、住民からの要望でもあった。志布志市は令和4年の第2次総合振興計画後期計画の策定にあたり、市民3,000人に向けたアンケートを実施。オンライン申請などのデジタル化施策に一定のニーズを確認した。また、最近では、市のWebサイトへのオンライン申請に関する問い合わせも増えている。加治木氏は「新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、非対面での行政サービスが求められるようになったのだと思います」と指摘する。住民のニーズを反映し、より良い市民サービスを作り上げるうえでも、オンライン申請は有効だった。

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  3. 03.職員のデジタル化への意識向上を図れる

    デジタル化施策の推進には「職員のデジタル化への意識向上」も欠かせない。いくらシステムなどを導入しても、窓口で住民に接する職員の一人ひとりが、デジタル化に対応しなければ、行政DXは実現しない。その点、オンライン申請の導入は、部門横断的に多くの職員が関わる取り組みであるため、全庁的にデジタル化の意識向上を促進できる。事実、加治木氏も、オンライン申請の導入を通じて、職員のデジタル化への理解を深められたと手応えを感じている。

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Yahoo!くらしへの掲載がオンライン申請の広報をサポート

マイナポータル(ぴったりサービス)の標準様式を利用するメリットとは

志布志市では、現在、39のオンライン手続きのうち、38をマイナポータル(ぴったりサービス)の標準様式で登録している。今後の自治体システムの標準化・共通化を見据え、国が推奨する標準様式を積極的に利用した形だ。当初は標準様式と既存の書式との相違点が懸念されたが、各所管課の混乱や戸惑いは想定よりも少なく、登録はスムーズに進んだ。

その一方で、デジタル化推進係の轟原彩未氏は、標準様式の利用に確実なメリットを感じていると話す。オンライン申請の周知を促進する点だ。標準様式で登録された申請手続きは、Yahoo!くらしに自動的に連携されるため、住民はYahoo! JAPAN経由でもオンライン申請の情報を知ることができる。轟原氏は「正直なところ、限られた予算や機会のなかで、オンライン申請の情報を周知することに、難しさを感じることもあります。そうしたなかで、ヤフーという高い認知度を誇る媒体を利用できるのはたいへん心強いです」として、標準様式の利用によるメリットを実感していると話す。

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行政DXの推進には「個の力」が必要不可欠

オンライン申請の壁となる「組織の縦割り」を乗り越えるには

加治木氏は「オンライン申請に限らず、デジタル化施策に取り組むうえでは『組織の縦割り』が障壁になることがあります」と、これまでの取り組みを振り返る。行政手続きのデジタル化を進めるには、担当部署である所管課からの協力が欠かせない。しかし、部署ごとにデジタル化への理解や意欲には温度差があり、場合によっては、取り組み自体の必要性を問われることもある。

そうした際には、コスト面・業務面でのメリットや国の方針を、しっかり各所管課に説明することが重要だと加治木氏は語る。「国の発出している資料は、専門用語や横文字が頻出するため、そのまま説明に用いても理解を得にくい印象です。そのため、所管課や専門部会の職員に説明する際には、専門用語などを分かりやすい言葉に置き換え、図版を添えた資料を新たに作り直していました」(加治木氏)。組織の縦割りを乗り越えるため、手間と時間をかけて、各部署と協力を図る姿勢が、志布志市のデジタル化の原動力となっていることが分かる。

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デジタル化に意欲的な人材を育成し、組織変革を加速させる

また、加治木氏は、行政DXの実現には「デジタル化に意欲的な人材をいかに増やすか」もポイントだと話す。「行政DXは国の方針であり、自治体にとっては組織的に対応せざるを得ない取り組みです。しかし、その推進には『個の力』が欠かせません。意欲を持った個人が、新たな提案を行うことで、職員一人ひとりの意識が向上し、DXを加速していくのだと思います」(加治木氏)。

志布志市では、令和4年度から若手職員を中心にプロジェクトチームを発足。行政DXに向けた企画立案を実施するとともに、各部署のデジタル施策をリードする人材の育成を行っている。組織を動かす『個』の育成...こうした志布志市の取り組みは、デジタル化に迫られる多くの自治体の良きヒントになるに違いない。

ライター:島袋 龍太

フォトグラファー:三浦 伸一

取材日:2022年8月8日

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