遺産相続に関する手続きガイド - 遺産相続に関する手続きと流れをご説明します

遺産相続に関する手続き

遺産相続に関する手続きについて、流れにそって順にご説明します。(遺言書の有無確認から進める場合やそれぞれの手続きを並行して進める場合もあります)

1.相続人の調査

相続人の調査

相続人の範囲とは

相続人の範囲は、民法によって「血族」と「配偶者」と定められています。血族には順位がついています。先順位の人がいれば、後順位の人は相続人になりません。

順位 相続人
第1順位 被相続人(亡くなった人)の子 またはその代襲者
第2順位 直系尊属(父母・祖父母など 亡くなった人の前世代の直系親族)
第3順位 兄弟姉妹またはその代襲者

※配偶者(婚姻関係にある夫または妻)は常に血族の相続人と同順位(つまり第1順位)で相続人となります。
※代襲者とは、被相続人の死亡以前に、相続人となるべき子や兄弟姉妹が死亡するなどが原因で、本来の法定相続人の代わりに相続人となる人(一般的には被相続人の孫など)
詳しくは、国税庁「相続人の範囲と法定相続分」をご確認ください。

戸籍謄本の収集

だれが相続人であるか確定するために、被相続人(亡くなった人)が生まれてから死亡までの一連の戸籍謄本と相続人の戸籍謄本を収集します。

  • 収集する戸籍謄本
    被相続人の「出生から死亡」までの一連の戸籍謄本および相続人の戸籍謄本
  • 必要書類
    本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等の写真付き証明書等)
    ※必要書類の詳細は、自治体のサイトをご確認ください。
  • 戸籍謄本の請求窓口
    被相続人・相続人の本籍地の市区町村役所
    ※被相続人の一連の戸籍謄本は、数カ所の役所に請求する場合が多いため、すべての戸籍謄本をそろえるには通常1~2カ月程度を要します。

相続関係が複雑な場合は、法務局で相続人を証明する「法定相続情報証明制度」を利用すれば相続人の見落としを防止できます。
詳しくは、法務局「法定相続情報証明制度」をご確認ください。

収集した戸籍謄本と法定相続情報一覧図(相続関係を一覧にした図)を法務局に提出して内容に漏れがなければ、一覧図に認証文を付された写し(法定相続情報一覧図の写し)を無料で交付してもらえます。収集した戸籍謄本の束(被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本と相続人の戸籍謄本)の代わりに、法定相続情報一覧図の写しを利用してこの後の相続の承継手続を行うことができます。
法定相続情報一覧図については、法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」をご確認ください。

2.相続財産の調査

相続財産の調査

相続が開始すると、被相続人(亡くなった人)の財産に属した一切の権利義務は、原則、全て相続人が承継します。相続財産には、主には金融資産と不動産があります。

例外として相続財産に属さない財産・権利には次のもの等があります。

・被相続人の一身に専属したもの(一身専属権)
 個人の人格・才能や地位と密接不可分の関係にある権利義務
 例:雇用契約による労働債務、生活保護受給権 等
・その他
 位牌・仏壇等の祭祀財産、死亡退職金、遺族年金、生命保険金 等

(1)金融資産の調査

被相続人が口座を開設していた金融機関の「残高証明書」で金融資産を確認します。ネット銀行に口座を開設している場合もありますので、亡くなられた方が使っていたパソコンやスマホのメール等も確認しておきましょう。
口座の取引履歴を知りたい場合は、残高証明書とあわせて「取引履歴の開示請求」を行います。

(2)不動産の調査

被相続人が所有していた不動産を調査します。

名寄帳は、課税の対象となっている固定資産(土地・家屋)を所有者ごとに一覧表にまとめたものです。被相続人が所有していた不動産の所在地を管轄する市区町村の役所に請求します。

名寄帳に記載されている土地・建物の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を法務局に請求して権利関係を確認します。履歴事項全部証明書は、どの法務局でも請求できますし、法務局のサイトからオンラインで交付請求を行うことができます。詳しくは、法務局「オンライン申請のご案内」をご確認ください。

3.財産目録の作成

相続財産の調査で判明した相続財産のすべてを一覧化した財産目録を作成します。 財産目録は、相続人が遺産分割協議を円滑に進めたり、相続税を申告するときの遺産総額の確認にも利用できます。
相続財産の漏れや不備などを防ぐために税理士等の専門家に相談しながら作成するとよいでしょう。

被相続人の債務も相続人は承継します。相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相続放棄の申述を行って受理されると相続を放棄した人は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったとみなされ債務を承継しないですみます。
なお、相続放棄をした場合、プラスの財産も承継はできません。

4.遺言書の有無確認

遺言書の有無確認

被相続人が遺言書を残した場合と残さなかった場合で相続財産の承継手続は異なるため、遺言書の有無を確認しましょう。

公正証書遺言の調査

公証役場の「遺言検索システム」を利用すると、公正証書遺言の有無が判明します。
秘密保持のため、相続人等利害関係人のみが公証役場の公証人を通じて照会を依頼できます。全国どの公証役場でも照会を依頼できます。

公証役場で遺言書が作成されていた場合、作成した公証役場・遺言者の住所・氏名・生年月日・作成年月日等が分かります。作成した公証役場に請求すれば、公正証書遺言の謄本・正本を入手できます。
なお、遺言検索システムのスタート以前の公正証書遺言の有無については、公正証書遺言を作成したと思われる公証役場に個別に問い合わせるしかありません。

  • 必要書類
    戸籍謄本(亡くなった人の「死亡した」という事実の記載があり、かつ、亡くなった人と相続人等の「法律上の利害関係」があることを証明できるもの)
    身分証明書(マイナンバーカード・運転免許証等)等
     ※必要書類は、照会する公証役場にお問い合わせください。

自筆証書遺言の調査

遺言者が作成した自書証書遺言があるか調査します。2020(令和2)年7月からは、遺言書の真正や遺言の内容をめぐるトラブルや相続人が遺言書の存在に気が付かないまま遺産分割を行ってしまうリスクなどを防ぐため、法務局に自筆証書遺言を保管する制度がスタートしました。
遺言書保管制度を利用すると自筆証書遺言の法務局での保管有無を確認できます。

遺言書が法務局に保管されていた場合は、被相続人が「遺言書情報証明書」を請求すれば、遺言書に係る遺言の内容等を確認できます。

自宅等で保管されていた自書証書遺言の場合、「遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」という要件を満たさないと法律的に無効になるため注意が必要です。
なお、2018(平成30)年7月の相続法改正で、自筆証書遺言に「財産目録」を添付する場合は、その目録については自書する必要がなくなりました。
ただし、この場合、目録の各ページに署名をし、印を押さなければなりません。

法務局に保管されていなかった自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者やこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、速やかに遺言書を相続開始地(遺言者の最後の住所地)の家庭裁判所に提出して「検認の申立て」と「検認済証明書」の申請を行う必要があります。

5.遺産の承継(引継ぎ)手続

遺産の承継(引継ぎ)手続

相続財産の払戻手続や不動産の相続登記といった遺言の内容を実現する手続き(遺言執行)を開始します。

公正証書遺言 「検認」を経ずに遺言を執行できます。
法務局に保管されていた自筆証書遺言 「検認」を経ずに遺言を執行できます。
法務局に保管されていなかった自筆証書遺言 「検認」を経て遺言を執行します。

原則、遺言書で指定された遺言執行者が遺言の内容を実現する手続きを行います。また、遺言執行者は、就任を承諾したときは直ちに手続きを開始し、遅滞なく相続人へ遺言の内容を通知し、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません。

相続人全員で遺産分けの話し合い(遺産分割協議)を行います。「だれが・どの財産を・どれだけ」承継するか相続人全員が合意したら、合意内容をまとめた書面(遺産分割協議書)を作成し、相続人全員が署名・押印(実印)します。そして、遺産分割協議書の内容に基づき、相続人が金融機関の払戻手続や法務局への相続登記等の申請を行います。

遺産の相続手続や相続税の申告の際には、「遺産分割協議書」とあわせて相続人全員の「印鑑登録証明書」の提出が必要となります。

遺産分けの話し合いや遺産分割協議書の作成方法等については、弁護士などの専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。

なお、遺産分割は、期限は定められておらず、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、協議によっていつでも遺産の全部または一部を請求できます。

監修

竹内行政書士事務所 行政書士 竹内 豊

更新日時:2023年3月24日