社内の手続き
定年退職時の退職届
定年退職は、就業規則で定められた定年に達すると自動的に退職となりますので、社員側から退職届の提出をする必要はありません。
就業規則等で定年退職後の再雇用の有無や再雇用する場合の労働条件等をあらかじめ確認しておくことも大切です。
有給休暇の消化
退職する前に年次有給休暇の残日数がある場合は、退職日までの間に年次有給休暇を取得することが可能です。
年次有給休暇は退職日後は消滅しますので、計画的に取得しましょう。退職日の間近は業務処理や引継ぎ等で年次有給休暇をしづらいこともあり得ます。後任者との引継ぎを円滑に行えるようコミュニケーションを図り、年次有給休暇を取得しつつ、引継ぎを行えるようにすることも大切です。
定年退職時に受け取る書類
定年退職時に会社から受け取る書類は以下のとおりです。
- 離職票
- 退職証明書
- 雇用保険被保険者証
- 健康保険被保険者資格喪失証明書
- 年金手帳もしくは基礎年金番号通知書
公的な手続き
退職後に必要な公的な手続きとは?
定年退職後に必要な公的手続きは健康保険の手続き、年金の手続き、雇用保険の手続き、税金の手続きです。
健康保険の手続き
退職後の健康保険への加入は、主に3つの方法があります。国民健康保険に加入する、前の勤務先の健康保険を任意継続する、親族の扶養に入るという方法です。定年退職後に別の会社で勤務する場合、勤務条件等により勤務先の健康保険に加入することがあります。
詳しくは健康保険の手続きの説明をご確認ください。
年金の手続き
年金受給の手続きや国民年金加入の手続き、厚生年金加入の手続きがあります。
詳しくは年金の手続きの説明をご確認ください。
雇用保険(失業手当)の手続き
定年後に再就職する場合は、雇用保険の手続きを行っていると基本手当(失業手当)を受給しながら求職活動を行うことができます。
詳しくは雇用保険(失業手当)の手続きの説明をご確認ください。
税金の手続き
定年退職する時に、退職金を受け取っている場合、確定申告が必要になる場合がありますが、勤務先で所定の手続をしていれば、源泉徴収で課税関係は終了するため確定申告をする必要はありません。勤務先で所定の手続きを行っているかが重要です。
詳しくは退職金の手続きの説明をご確認ください。
その他、退職後の住民税や所得税については、住民税・所得税の手続きの説明をご確認ください。
定年退職される方
健康保険の手続き
高齢受給者証の返却
健康保険に加入している人の中で70歳~74歳の後期高齢者に該当しない人を高齢受給者といい、高齢受給者証が交付されます。退職する人が70歳~74歳の場合、健康保険証に加えて高齢受給者証を会社に返却します。
定年退職後の健康保険
定年退職後に別の会社で勤務する場合、勤務条件等により健康保険に加入することがあります。健康保険は75歳までで、75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入します。
別の会社で勤務せずに健康保険に加入する場合、以下の3つの方法があります。
他の医療保険制度(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入していない全ての住民の方を対象とした医療保険制度です。都道府県及び市町村(特別区を含む)が保険者となる市町村国保と、業種ごとに組織される国民健康保険組合から構成されています。
国民健康保険に加入する場合、必要な書類は以下のとおりです。
- 印鑑
-
口座番号がわかるもの
(保険料を口座振替にする場合) -
マイナンバーが確認できるもの
(加入する人の分) - 身分証明書
- 健康保険の資格喪失証明書、退職証明書、離職票のいずれか
国民健康保険の加入手続きは、居住の市区町村の担当窓口で行ないます。一部、郵送で受けている自治体もあります。
原則として退職日の翌日から14日以内に手続きを行うことが必要です。
それまで加入していた協会けんぽや健康保険組合にそのまま加入するというものです。
「任意継続被保険者資格取得申出書」を記入のうえ、居住している住所地を管轄する協会けんぽ支部に退職日の翌日から20日以内に提出します。会社の健康保険組合がある場合は、担当へ提出します。
家族の健康保険の被扶養者になるというものです。
扶養者の会社の担当窓口へ「被保険者の戸籍謄(抄)本」などの被保険者との続柄が確認できる書類や、「退職証明書」「年金額の改定通知書の写し」などの収入要件を確認できる書類の提出が必要です。
被保険者に被扶養者の追加があった場合は、事実発生から5日以内に会社の担当者へ必要な書類を提出します。
後期高齢者医療制度
75歳の誕生日に健康保険の被保険者資格は喪失します。資格喪失手続きは、勤務している会社が行います。75歳以上になると、自動的に後期高齢者医療制度に加入します。該当者には市区町村から保険者証が送られてきます。
詳細は、後期高齢者医療制度のページをご確認ください。
健康保険証を紛失した場合の手続き
健康保険証を紛失していたときは、会社の方で「健康保険被保険者証回収不能届」を「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」に添付して手続きを行いますので、必要に応じて会社へ紛失理由をお伝えください。
関連リンク
定年退職される方
年金の手続き
国民年金とは?
国民年金は、日本在住の20歳以上60歳未満の全ての人が加入対象です。老齢時の所得保障だけでなく、重い障害や死亡など、万が一のときに、生活の安定が損なわれないよう、皆であらかじめ保険料を出し合い、お互いの生活を支えあう仕組みです。
関連する説明ページ
定年退職後の年金の手続き
定年退職後の年金の手続きは、以下のとおり3つの方法があります。
-
年金を受け取る場合
年金請求の手続きを行います。 -
国民年金の切り替え
年金の受給資格である10年を満たしていない場合や満額受給できる期間(480月)に達していない場合、任意で国民年金に加入することができます。 -
厚生年金保険に加入
退職後、別の会社に勤務する場合、勤務条件等により厚生年金保険に加入することがあります。
年金請求の手続き
- 年金請求書を受け取る
- 年金請求書を提出する
- 年金を受け取る
年金受給の年齢 |
老齢基礎年金は受給資格期間が10年以上ある場合に、原則65歳から受給可能です。65歳以降に受給資格を満たした場合は、その時点から年金を受け取れます。 老齢厚生年金は、受給資格期間が10年以上ある場合に原則65歳から受給できます。 |
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必要なもの |
・戸籍謄本や戸籍抄本(6カ月以内のもの) ・住民票(世帯全員分、6カ月以内のもの) ・受取先金融機関の通帳または キャッシュカード(コピー可) ・印鑑(認印可) ・年金手帳 ・配偶者の所得証明書 または 年金証書 |
手続きする場所 | 年金事務所 |
手続き期限 | 年金の請求をする期限は特に決まっていませんが、年金には「5年の請求時効」というものがあり、権利が発生して5年以上請求をしないでいると、さかのぼる5年間分は受け取れますが、それよりも以前の年金は受け取れなくなります。 |
年金の受給方法
年金は、年金請求の手続きをする時に提出した口座へ振り込まれます。手渡し(現金)で受け取る方法もあります。この場合、受け取りはゆうちょ銀行限定です。
年金は、偶数月の15日以降に郵便局の窓口に行けば受け取れます。15日が土日祝日の場合は、15日以前の直近の平日に受け取れます。この時に必要なものは、年金送金通知書と年金証書の2点です。
国民年金の切り替え手続き
定年退職後の国民年金の加入は任意です。国民年金に切り替える場合は、自分で手続きをする必要があります。切り替えについては、国民年金の切り替え手続きをご確認ください。
厚生年金保険に加入する場合
定年退職後に別の会社で勤務する場合は、勤務条件等により厚生年金保険に加入することがあります。厚生年金保険の加入は70歳までです。70歳以降も引き続き勤務する場合、必要な手続きは会社で行います。
国民年金保険料の免除制度
保険料を納められないときのために、免除制度があります。さかのぼって免除等を申請できるのは、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1カ月前までの期間)です。
詳細は、国民年金保険料の免除制度と納付猶予制度のページをご確認ください。
関連リンク
60歳以上で条件を満たす方
雇用保険(失業手当)の手続き
失業手当とは?
失業手当とは、会社を退職する時、一定の要件を満たした場合に雇用保険から受け取れる手当のことで、基本手当といいます。
関連する説明ページ
雇用保険(失業手当)の手続き
離職理由によって、基本手当を受給する時期に違いがありますので、会社が作成した離職証明書の離職理由を確認することが大切です。
必要なもの |
・雇用保険被保険者離職票【1】 ・雇用保険被保険者離職票【2】 ・雇用保険被保険者証 ・個人番号確認書類 |
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手続きする場所 | 自分の現住所を管轄するハローワーク |
受給条件 |
・失業状態である ・退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上ある ・ハローワークに求職の申し込みをしている |
受給期間 | 原則として離職日の翌日から1年間。短期雇用特例被保険者は、離職日の翌日から6カ月間。この期間内の失業状態にある日(受給手続き後の日に限る)について、所定給付日数を限度として支給を受けることができる。 |
受給額の計算式は、(離職前6カ月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率です。
なお、給付率は、離職時の年齢、賃金により、45%~80%になります。給付額には上限・下限があります。
60歳以上の人が受給できる給付金
60歳以上で、所定の要件を満たした人を対象に、以下の給付金が受給できる制度があります。
高年齢雇用継続基本給付金は、60歳時点の賃金と比較して75%未満に賃金が低下した方で、受給資格を満たす場合に支給される給付金です。再就職給付金を含む基本手当(失業手当)を受給していない方が対象です。
受給資格
原則として60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)が60歳時点の75%未満となっている方で、以下の2つの要件を満たした方が対象です。
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
- 被保険者であった期間が5年以上あること
受給額の計算方法
賃金額×支給率=高齢者雇用継続給付金
支給率は、60歳到達時の賃金月額※1と比較した賃金の低下率※2で決まります。
※1 60歳に到達する前 6カ月の総支給額÷180×30
※2 支給対象月に支払われた賃金額÷60歳到達時の賃金月額×100
高年齢雇用継続給付の手続き
手続きする場所 | 勤務する事業所を管轄するハローワーク |
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受給期間 | 被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月まで |
手続きに必要なもの
事業主経由で手続きを行いますが、自身で手続きすることもできます。自身で手続きする場合は、以下の書類が必要です。
初回の申請に必要な書類
- 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
- 高年齢雇用継続給付支給申請書
- 賃金の額及び賃金の支払い状況を証明することができる書類※1
- 年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書※2
2回目以降の申請に必要な書類
- 高年齢雇用継続給付支給申請書※3
- 賃金台帳、出勤簿又はタイムカード※1
※1 支給対象月に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況等を確認できる書類
※2 被保険者の年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書などの書類
※3 受給資格確認や前回の支給申請手続後にハローワークから交付されます
高年齢再就職給付金は、60歳以上65歳未満の人が、基本手当(失業手当)の受給中に再就職した場合の給付金です。
受給資格
基本手当(失業手当)を受給した後、60歳以後に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となった人で、以下の5つの要件を満たした人が対象です。
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
- 基本手当についての算定基礎期間が5年以上あること
- 再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること
- 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いたこと
- 同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと
高年齢再就職給付金の手続き
手続きする場所 | 勤務する事業所を管轄するハローワーク |
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受給期間 |
再就職した日の前日における基本手当の支給残日数 200日以上のとき 再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで 100日以上200日未満のとき 同様に1年となります ※被保険者が65歳に達した場合は、その期間にかかわらず、65歳に達した月まで。 |
失業給付と老齢年金
65歳未満で失業給付(失業手当を含む雇用保険の公的な保険給付)を受給する場合は、年金は全額支給停止されます。年金支給停止期間は、求職の申込みをした月の翌月から失業給付の受給期間が経過した月、または、所定給付日数を受け終わった月までです。
関連リンク
退職金の支給を受ける方
退職金の手続き
退職手当等の支給を受ける人は、氏名や勤続年数などを退職所得の受給に関する申告書に記載し、退職手当等の支払者に提出することが必要です。
退職所得の受給に関する申告
(退職所得申告)
必要なもの | その年中に他の退職手当等の支給を受けている場合は、その退職手当に係る「退職所得の源泉徴収票」1部が必要です。 |
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提出先 | 退職手当等の支払者(会社)に提出 |
受け取り方、計算方法 | 退職金の受け取り方や計算方法等は、退職金規程に記載されています。 受け取り方の詳細が退職金規程に記載されていない場合は人事総務担当等に確認する必要があります。 |
注意点
国内で退職手当等の支払を受ける居住者は、この申告を行わなければなりません。この申告を行わない場合は、その退職手当等の金額につき20.42%の税率による源泉徴収が行われます。
関連リンク
定年退職される方
住民税・所得税の手続き
退職後の住民税の支払い
住民税は、1年間の税額を毎年6月~翌年5月までの12回に分けて給料から天引きされます。会社を退職される場合は、以下の3つの方法で住民税を納めます。
-
特別徴収
退職後すぐに別の勤務先に勤める場合に、引き続き給料から天引きで納める方法です。 -
一括徴収(退職時期1~5月)
退職時の最後の給料から、残りの住民税を差し引く方法です。 -
普通徴収(退職時期6~12月)
後日、お住まいの市町村から通知書が送付され、納付書で納める方法です。
退職時期が6月~12月の場合は、原則、普通徴収ですが、退職者の希望により一括徴収で納めることも可能です。
確定申告と年末調整
会社から給与の支払いを受けている場合、通常所得税は給料から源泉徴収されます。しかし、源泉徴収は概算で計算されるため、過不足が生じます。給与所得者は年末調整によって所得税の納税が完了しますので、原則として確定申告の必要はありませんが、年の途中で退職した場合、所得税が納め過ぎになる場合があります。中途退職した同じ年に再就職しない場合には、確定申告をすることで還付されます。
関連リンク
傷病手当金の支給条件を満たしている方
退職後の傷病手当金
退職日まで引き続き1年以上被保険者であった従業員が、退職日に傷病手当金を受給しているか、または受給できる状態(傷病手当金の支給要件を満たしている状態)であれば、退職後も引き続き傷病手当金を受給することができます。
支給される期間 |
傷病手当金は、病気やけがで休んだ期間のうち、最初の3日(待機)を除き4日目から支給されます。 支給期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6カ月に変わりました。 ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合は、いままでどおり支給を開始した日から最長1年6カ月までの期間になります。 |
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次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き残りの期間について傷病手当金を受けることができます。
- 被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
- 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。 (退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金は受給できません。)
注意点
健康保険被保険者の資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が、老齢退職年金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢退職年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
傷病手当金は、75歳到達以降は、後期高齢者医療制度に移行し、同制度には休業に関する給付制度がないため、傷病手当金の給付を受けることはできません。
傷病手当金が調整される場合
-
障害厚生年金または障害手当金と傷病手当金の調整
傷病手当金と同じ病気(ケガ)により、障害厚生年金または障害手当金が支給される場合は、傷病手当金の支給金額が調整されます。 -
老齢年金と傷病手当金の調整
退職後に老齢年金が支給されている場合には、傷病手当金の支給金額が調整されます。
傷病手当金の支給期間通算化
令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されました。
- 同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6カ月に達する日まで対象となりました。
- 支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6カ月を超えても、繰り越して支給可能になりました。
関連リンク
監修
アヴァンテ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 小菅 将樹
※「住民税・所得税の手続き」部分を除く